■視点稿
視点稿1 オランダの切花品目変遷

 ヨーロッパの花き園芸を見て視て:国際化時代に産業として生き残るための戦略を学ぼう−1

 〜オランダの切花花き品目の変遷から学ぶもの〜

 オランダは農業とりわけ花き産業を日本の工業と同じように国際化産業として位置付け振興してきました。そして現在種苗、経営・生産方式、生産・流通・販売の国際化等あらゆる場面において世界をリードしています。

 今回は切花品目のここ15年余の変遷を切花輸入がほとんど無かった1990年と国際化した2005年の比較から見て、学ぶべき視点を紹介します。

 【1990年と国際化した2005年の比較

 1 命運高まるカーネーション・宿根カスミソウ

1990年に市場取扱金額で上位3位にあったカーネーション、8位にあった宿根カスミソウはそれぞれ15位、14位に後退し、扱い総量・国内数量ともに減少しました。この要因は輸入による国内生産の衰退と品目需要の交替を意味します。そして、これら品目をオランダ国内関係者にはオールドフラワーと称している識者もいます。この動向は日本国内・県内生産の将来を占うものでもあるし、この傾向を回避する視点を見つけるためにもオランダ国内の生き残りをかけた生産者の経営・技術戦略の経験に学ぶ必要を感じます。

 2 国際化の中での安定化品目

15年余年間変わらず10位以内にいる品目に注目しよう。これらは輸入に負けない要素を持っています。スプレーギクのようにモバイルシステムの開発導入拡大等により、輸入ものにコスト競争で勝っている事例。フリージアのように鮮度の低下し易い品目は輸入できない事例。シンビジウムのようにかさばる品目は輸送コスト面から国際流通に難がある事例。併せて、これら品目にはベースとして品種開発の先導が伴っているのと施設機械類投資、種苗費高等に対応できる高度経営・技術的側面が整っています。これらに注目し、今後の安定した品目として捉え検討することが期待されます。

 3 期待される伸長品目は

10位以内に入ってきた品目に輪ギク、アンスリュームがあります。これらは元々20位以内にいた品目で着実な伸びを示しました。変遷が著しいのは10位以下です。スターチス、アイリス、スイセンが下位化したほか20位以内にいたが23位以下になった品目にはアスター、ブバルディア、ユウギリソウ、デルフィニウムがあります。一方下位から急速に伸びた品目にはハイドランジア、ヒマワリ、ヒペリカム、カラー、シャクヤク、ソリダコがあります。また中位からにはアマリリス、トルコギキョウがあります。これらの品目には県内を含めた国内で今後導入拡大が期待される品目・品種が含まれます。期待される品目では品種動向、種苗導入、栽培方法等学ぶべき素材は多いと言えます。

御案内

国内の花き生産・消費が停滞する中、花き生産者は既存品目の生き残り策や補完品目導入、品目転換に活路を見出すことをせまられている経営がほとんどと言って過言ではありません。自己あるいはグループで課題解決を試みる一つとして、前述の事象視察を提案します。これからの視察は自己の経営・技術課題に解決のヒント、具体的手法の入手や種苗・技術導入等の直接的成果が求められます。そのためには少人数で深く追求する視察形態が望まれます。

希望に沿う視察内容の検討から実施までをコーディネートする仕組みを高冷地花きコンサルツ、マグノリア社(オランダアムステルダム)の体制で整え、関係者の国際化の進展をお手伝いすることとしました。お気軽に御相談下さい。

 高冷地花きコンサルツ 大平民人記

(「農業と生活」誌(長野県農業改良協会発行)2007‘1月号掲載内容に加筆)

マグノリア社による
ハイドランジアの切花栽培の案内状況
オランダで伸長著しいハイドランジアの切花栽培
切花の荷作り調整作業
視点稿2 ヨーロッパ花卉園芸展示会原稿・写真説明

 ヨーロッパの花き園芸を見て視て:国際化時代に産業として生き残るための戦略を学ぼう−2

  〜 ヨーロッパ花卉園芸農業展示会から学ぶもの 〜 

             

始めに

現在、日本の農業も厳しい時代を迎え、輸入品の拡大、新しい品種等、小売からの厳しい要求、高い人件費、燃料費の高騰など色々と頭の痛い問題が山積みです。

これからは今までと同じ対応では立ち行かなくなり、独自で問題を解決して行かなければならない時代となりつつあります。

しかし、これは海外でも全く同じことが言えます。

ヨーロッパの事情も同じでオランダは、ほんの一部の生産者を除いて大規模機械化農場ヘと集約されていて、この競争に勝てない生産者は廃業、転業を余儀なくされています。

また、高い人件費も経営を圧迫していて東ヨーロッパ等の比較的人件費の

安い国の人を使うか、または新たな機械化を考えなくてはならない状況です。

さらに、品目・品種も燃料費高騰を背景に選択を慎重に考えなくてはいけない時代となっています。

ドイツの生産者は比較的中小規模農家が多く、オランダの様な大規模機械化による集約化は進んでいません。

最もオランダとの関係上、小品目多品種で対抗していこうという戦略もあるようです。

燃料は重油を使っている農家が多く、燃料費高騰はすぐに経営を圧迫します。

対応策としては出荷を遅らせたり、冬期は生産を中止するなどの他、最悪の場合は廃業になります。

このような厳しい状況の中で開催するオランダとドイツの2大花卉園芸農業展示会は、ヨーロッパの生産者、又その関係者は真剣に各展示会場をチェックして色々な情報等を参考にしながら、自らの農場運営、経営に毎年活かしている貴重な機会です。

日本の生産者、関係者もこのような厳しい同じ状況を共有しています。

現地で、生の情報に触れ、今後の状況を生き残る参考にしては如何でしょうか。

1 ホルティフェア(オランダ・アムステルダム)

毎年恒例の大型花卉農業展示会ホルティフェアが10月31日より11月3日までの期間 オランダ、アムステルダム、ライ展示会場の各展示施設にて今年も開催されました。

ヨーロッパ農業先進国オランダで、大きな展示スペースを使った各社のブースは趣向が凝らされ、見応えのある内容となっています。

去年の実績を見ると110カ国より約5万人の来場があり、展示参加者は51カ国より1005社の参加があったそうです。

会場の広さと参加国の多さの点ではドイツのエッセンの展示会よりオランダの方が大規模で、よりインターナショナルな内容を持っています。

会場は4つの部門に大きく別けられていて、各部門毎に色分けがなされていて会場をみてまわる際に非常に参考になります。

設備・技術系は青、流通系は赤、花卉品種系は緑、そして資材系は

黄色となっています。

花卉品種系会場は特に活気に満ちていて、新しい品種を各社が発表しています。

この期間に合わせて各種苗会社は自社の従来の品目・品種を始め新しい品目・品種などを発表して、生産者をはじめとした顧客への紹介に力をいれています。

世界の種苗をほぼ抑えているオランダの各種苗会社が出ている会場では、

品種決定に必要なカタログでは表現できない実際の色を目で直接確かめるという貴重な機会となり、各社展示会前では各国の生産者たちが真剣な眼差しで

品種をチェックをしています。

流通部門では店頭での最新の花の売り方の提案、またデザインや仕立て方の展示があり、オランダをはじめとした世界の花の販売の先端を走るヨーロッパの品種から小売までの一貫したイメージを目で実感する事が出来ます。

バケツ輸送などの展示も充実していて展示スペースが広いため各社の説明が分かりやすく比較検討には大変役立ちます。

設備、温室部門は自家発電機など大型の機械が多く展示され、大手メーカーが顔を揃えています。

野菜関連の設備等は特に充実していて、他の展示会ではではなかなかみられない機械や温室設備など、専門性の高い展示品となっています。

省力化機械展示も品目が多く、商品を実際に目の前にして色々なアイデアやヒントにつながリ、機械化の本場を実感させられます。

花のデザインや小売部門はヨーロッパの花の仕掛け人オランダらしく

新しいアイデアに溢れています。

各部門は全体的に会場が大きく、展示スペースも広いため説明も展示品も見やすく、一つの展示会で生産から小売まで幅広く各部門を一緒の機会に見る事が出来て、比較研究の対象としては貴重な優れた場だと実感します。

又、会期中、アルスメーア市場今年度のバイヤーからみた各品種毎のベスト品種賞や技術者向けのオランダ国内農業技術賞なども同時開催されていて、品種や技術の活性化や向上を目指して会場を盛り上げています。

2 IPM(ドイツ・エッセン)

今年で25年目を向かえ、ドイツ エッセンでおこなわれる花卉農業展示会アイピーエムは 近年、評判を高めて来ています。特にヨーロッパ農業関係者の間では特別注目されている展示会です。

主催者発表では去年は41カ国の1500名の参加者により6万人の来場者が世界82カ国からやって来ました。今年も去年を上回る規模で開催される予定です。

展示場全体面積は若干ホルティフェアーに大きさでは劣るようです。

展示部門は、植物、技術、花小売、販売促進と分けられています。

ドイツはオランダの様な大規模な農場経営は比較的少なく小品多品目を生産している農家が多く見られます。

このような背景からオランダの展示会に比較して、出展品目が日本の生産者や関係者には解りやすい点が評判です。

また同様の理由からヨーロッパの生産者たちにも好評です。

設備、技術系なども、充実していて比較的小規模な農場向けな商品を展示してあり、日本の人には非常に参考になります。

場所柄、ヨーロッパの大国ドイツを重要な顧客として花卉類を販売しているデンマークの鉢もの会社は 他には無い大規模な展示をしていて、特に鉢物の充実には目をみはるものがあります。

花の小売部門では、ドイツ全土からの応募の若手デザイン競技会に力をいれていて内容も充実しており、毎年フラワーデザインショーも同時開催され、小売の人たちには見落とせない展示会となっています。

会場はオランダのように派手ではなく、落ち着いた雰囲気でゆっくり各展示場所を見て回ることが出来ます。総合展示会の特色である関係、関連先を一度に見れて、比較検討したり研究する場として、内容、規模と共にこの展示会もまた見逃してはならない場所です。

視察の進め

オランダホルティフェアーでは、各部門の最新、最多の情報に触れる事が出来ます。

ドイツエッセンIPMでは実際的、専門的な情報にであう事が出来ます。

それぞれに共通している事は花卉園芸農業を発展させ、活性化して行こうという情報をヨーロッパから発信している事です。

実際に現地に飛んで、これらの情報、技術、などを上手な形で活かして、独自の生き残り策などを探してみてはどうでしょうか。

現地コーディネートをマグノリア社が担当し、現地の案内を始め、日本への商品の買い付け、導入などの手助けもいたします。

 オランダ マグノリア社 社長 小島 治 記

(「農業と生活」誌(長野県農業改良協会発行)2007‘1月号掲載内容に加筆)

ホルティフェアでのアールスメーア市場の展示ブース
ホルティフェアでの小売業者向けの展示ブース
サンプルを商談席の横に展示して、実際の売り方を提案中の商談状況
ホルティフェアでの肥料関係社展示ブース
地味になりがちなイメージを展示ブースの色を明るくし、生産者にヘアピールしている各社の様子
ホルティフェアでの鉢物関係社展示ブース
台湾の胡蝶蘭の種苗・生産者が、ヨーロッパのブームを見込んで大きなスペースを使って展示している様子
ホルティフェアでの球根関係社展示ブース
ユリの球根輸出会社が扱う新品種を展示し、商談をしている状況
ホルティフェアでの種苗関係社ブース
ばらの育種会社が、基幹及び新品種を展示して、品種情報を説明している状況
ホルティフェアの行われたオランダ展示場ライ正面外側
数年後には空港から直接地下鉄が乗り入れる予定のライ展示場の正面全景

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